研究概要 |
本研究では、表面第2高調波発生(SHG)及び和周波発生(SFG)の非線形光学過程を利用して、固体表面(特に金属表面)に単分子層前後吸着した分子の電子励起状態の構造を明らかにする事を目的としている。励起光源としてチタンサファイアレーザーによる再生増幅器の出力を用いたOPG/OPAシステムを利用し、超高真空槽に保持したCu(111)清浄表面のSHGを波長領域250-350nmの範囲で観測した。さらに観測された幅広いSHGのバンドの帰属を行うためベンゼン、COの分子を導入しながらSHGを測定した。その結果、Cu(111)表面における電子状態として、表面吸着分子とその吸着量に依存した挙動を示すいくつかのバンドを見いだした。さらにその解析から表面の構造の違いにより異なる電子状態が存在することが明らかになった。また,Ni(111)表面上に吸着したギ酸イオン種(formate)に関して,波長800nm近赤外ピコ秒パルスを照射した場合にformateが示す動的挙動をSFGを利用した時間分解振動分光法により実時間で観測した。その結果、formateのCH, CD, OCOの各伸縮振動モードに帰属されるピーク強度が近赤外パルスを照射すると同時に減少し,数10psの時間スケールで回復してくることを見出した。また,回復時間に振動モード依存性があることも見出した。基盤温度依存性,励起強度依存性の実験,そしてピークの線幅やピーク波数なども含めた解析から,観測された強度の減少は非熱的な過程(おそらくホットエレクトロンによる表面励起過程)で進行している二とを明らかにした。また用いるパルスがフェムト秒のパルスであり、広いスペクトル幅を持つことを利用して、液晶空間変調器を用いた波形制御システムの制作も併せて行った。さらにこのシステムを用いて任意の時間的プロファイルを持つパルスを発生させることに成功した。
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