研究概要 |
1.C_<60>-希ガス化合物の作成と物性評価 C_<60>に一連の希ガス(RG=He, Ne, Ar, Kr, Xe)を1気圧、200℃で数日間接触させて試料を作成した。Kr, Xeはほとんど吸蔵されないが、He, Ne Arの吸蔵量はHe>>Ne, Arであり、希ガス原子のサイズが大きくなるにつれて減少することがわかった。He, Ne Arを接触させた試料が500-700Kの高温に希ガスの脱離ピークを示すこと、C_<60>-Arの試料のXPSの測定からAr2p, Ar3sのバンドを観測し且つこれらのバンドがケミカルシフトを示すこと、C_<60>-Arが弱いESRを示すことから、固体C_<60>に吸蔵された希ガス原子はC_<60>分子と強い化学的な相互作用をもって存在しているものと結論される。 2.C_<60>-希ガス化合物の理論計算 希ガスとC_<60>との間に働く化学的相互作用を定量的に評価するために理論計算を行った。C_<60>(RG)、C_<60>(RG)_2、C_<60>(RG)_3のモデル構造を作成し、構造の最適化および電子状態計算を行い次のことが明らかとなった。C_<60>(RG)においては、C_<60>He, C_<60>Ne, C_<60>Arの希ガス原子は中性であるが、C_<60>Kr, C_<60>Xeの希ガス原子はそれぞれ0.99,1.04の正の電荷をもつ。C_<60>(RG)_2においては、C_<60>Ar_2のAr原子にも0.02の正の電荷が出現し、C_<60>Kr_2,C_<60>Xe_2の希ガス原子の電荷はそれぞれ1.24,1.28に増大する。C_<60>(RG)_3においては、希ガス原子の電荷はそれぞれC_<60>(RG)とC_<60>(RG)_2における値にほぼ等しい。 3.カーボンナノチューブへの希ガス吸蔵 多層・単層とキャップの有無の組み合わせによる4種類のカーボンナノチューブ(CNT)を用いて希ガスの吸蔵特性を調べた。He, Ne, Arを接触させた試料において、化学的結合が支配的な高温で脱離ピークを観測した。また、多層、単層ともにキャップのある閉じたCNTの方が希ガスの吸蔵量が多いことがわかった。
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