研究概要 |
フーリエ変換マイクロは(FTMW)分光計を用いて有機ケイ素化合物の反応中間体として重要な役割を果たしているジメチルシレンを検出する目的でジメチルクロロシランおよびトリメチレンジメチルシランを放電や熱分解した。目的の分子種を検出することができなかったが、その際親分子の強い吸収線が多数観測されたので、FTMW分光計を用いて親分子の回転スペクトルを同位体種を含めて測定し、分子構造および分子内運動に関する知見を得た。同位体分子種29Siと30Siおよび13Cの回転スペクトルを測定し、置換構造を決定した。また、シランを放電することにより短寿命分子Si2H2の遷移101-000を測定できた。 スペクトルの解析から、5個の同位体分子種の回転定数と塩素原子のeQqの値を得た。同位、体種の回転定数からC1,Si, C原子の座標が求められ、置換構造してrs(Si-C1)=2,071Å、rs(Si-Cl)=2.071Å、∠C1SiC=108.3°を得た。これらの結合距離は、類似分子の値とよく一致していた。また、塩素原子の核四重極子結合定数(eQq)の値からSi-Cl軸方向のeQqの成分として-35.84MHzを得、塩素原子のイオン性は65%と見積もられた。さらに、分裂より得られたメチル基の内部回転障壁V3の値は類似分子の値と良く一致していた。 c-TMDMSiでは四員環中のSi-C結合距離はSi-CH3の結合距離より約0.03Å長いこと、また四員環中のC-C結合距離は通常の炭素一重結合距離よりも約0.03Å長いこと、さらに、四員環中のCSiC面とCCC面との2面角は29.7°であることが分かった。測定されたc-TMDMSiの個々の回転線は6本に分裂していた。この分裂の理由として2個のメチル基の内部回転で分裂した3本が、一四員環が等価なメチレン基の炭素原子を軸にしたペッカリング(反転運動)を行つてさらに2本に分裂していることが分り、解析を行うにはパッカリング運動と2個のメチル基の内部回転運動との相互作用を同時に取り入れる必要があることが分った。
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