研究概要 |
カルボニル共役π電子系化合物の性質と反応に関する研究によって以下の結果が得られた。 1.固体状態における構造についての新規の概念の発見 トロポロンは代表的なケトーエノール互変異性系の一つであり,溶液状態における速いプロトン移動が,固体状態では^<13>C NMRの時間スケールにおいて平衡過程が凍結されている。モノチオトロポロンは,トロポロンの環外位にある酸素原子の一つが硫黄におきかわった化合物である。我々はこのモノチオトロポロンが溶液のみならず固体状態においても速いチオン-エンチオル平衡混合物として存在していることを見いだした。そしてこの固体状態における挙動の違いは結晶中のパッキングの違いにもとずくことを明らかにした。 2.活性トロボノイドと活性メチレン化合物との反応によるアズレン類合成 活生トロポノイドと活性メチレン化合物との反応によるアズレン類の合成方法は,5員環部分に種々の置換基を有するアズレンの合成に幅広く利用されてきた。それにもかかわらず,その反応機構の詳細については長いあいだ解きあかされる事もなく未解明のまま今日に至っていた。我々は,本アズレン合成法の代表例として,2-メトキシトロポン(活性トロポノイド)とマロノニトリル(活生メチレン化合物)との反応によるアズレン生成反応の機構について検討した。その結果,多段階反応であるにもかかわらず,出発物質から生成物へと速やかに収率よく進行する過程を解明した。
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