研究概要 |
硫黄原子を有する6,9,12,15,18,21,24,27員環不飽和チアクラウンエーテルをシス-ジクロロエテンとNa_2Sとの反応により合成することができた。結晶構造はX線結晶構造解析により明らかにし、分子内に空孔を持つ興味深い構造であることがわかった。18,21員環不飽和チアクラウンエーテル(18-UT-6,21-UT-7)とCF_3COOAgとの反応では、新規な銀錯体Ag^I(18-UT-6)(CF_3COO)およびAg^I_2(21-UT-7)(CF_3COO)_2がそれぞれ得られた。溶液中での錯形成の化学量論を^1H-NMRにより測定し、滴定曲線を書いたところ、15-UT-5,21-UT-7では1:1および2:1(metal : macrocycle)でその傾きが変化しており、錯形成において取り込む銀イオンの数に選択性があることがわかった。また、18-UT-6と当量のHgCl_2との反応ではHg^<II>(18-UT-6)Cl_2が得られたが、CdCl_2との反応では安定な錯体は得られなかった。Hg^<II>(18-UT-6)Cl_2は結晶状態では、水銀イオンに六個の硫黄原子が配位しており、二つの塩素を含め八配位の六方両錐構造をしていることがわかった。また、この錯体は溶液中で、解離と錯形成の間に速い平衡があり、平衡は解離の方向に大きく傾いていることも明らかになった。一方、対応する飽和のチアクラウンエーテル(18S6)と当量のHgCl_2およびCdCl_2との反応では、Hg^<II>(18S6)Cl_2およびCd^<II>(18S6)Cl_2がそれぞれ得られており、18-UT-6では、対応する飽和の18S6と比べ、環内に取り込む金属イオンの種類にも選択性を示すことがわかった。
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