研究概要 |
本研究では,白金II価錯体がそのaxial方向で他の金属イオンに配位した錯体,特に,架橋配位子等の他のサポート相互作用を持たない錯体の合成を目的としている。ドナーとなる錯体として炭素配位配位子など配位子場の強い配位子を有する白金(II)錯体を用いて,強固な供与型白金-金属結合を有する錯体を合成数種合成することに成功した。以下にその結果をまとめる。 (1)ドナーとして[Pt(phpy)_2](Hphpy=phenylpyridine),アクセプターとしてAg(ClO_4)を用いて,供与型金属-金属結合によりPtとAgが交互に積層した一次元鎖錯体を得ることができた。この錯体は直径が約2.3mmの巨大ならせん構造をとっており,一個の結晶の中ではらせんの向きが全て一方向に揃っている特徴を持つ。 (2)同様なPt-Ag系であるがアクセプターのAgイオンの対イオンとして配位性の陰イオン(NO_3^-,CF_3COO^-等)を用いることにより菱形のPt_2Ag_2骨格を有するクラスター錯体を合成することができた。この錯体は供与型Pt→Ag結合以外にAg-Ag間に金属-金属結合を有する珍しい錯体であった。 (3)アクセプターとして単核錯体ではなくRh複核錯体を用いることで,Pt→Rh-Rh←Pt骨格を有する異核四核錯体を合成することができた。この錯体は供与型および共有結合型の金属-金属結合を同時に有する珍しい錯体であり,また,供与型Pt→Rh結合を有する初めての錯体であった。 これらの成果は高配位子場下の白金錯体が強固な供与型白金→金属結合を形成することを明らかにしたことのみならず,供与型金属→金属結合が新規のより核数の大きなクラスター錯体の構築に有用であることを示しており,今後のクラスター錯体の化学において重要な知見を与えるものである。
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