研究概要 |
ホスフィンをペンダントとするシクロペンタジエン、ER'_3C_5H_4CH_2CH_2P(R)Mes(ER'_3=SiMe_3,SnBu_3;R=SiMe_3,H ; Mes=2,4,6-trimethylphenyl)およびそのLi塩の合成法を開発した。次に、これらとMCl_4(M=Zr, Hf)との反応を検討した。R=SiMe_3の場合は{C_5H_4CH_2CH_2P(SiMe_3)Mes}MCl_3が生成し、ホスフィン部分が金属に配位していることが明らかとなった。R=Hの場合は非常に複雑な反応が進行し、生成物の同定には至らなかった。しかし、出発錯体にMCl_4(tht)_2を用いることにより(tht=tetrahydrothiophene)、二級ホスフィンが配位した錯体である{C_5H_4CH_2CH_2P(H)Mes}MCl_3(tht)が生成できることを明らかにした。 次に、これらのホスフィン錯体をホスファイド錯体へ変換する反応を検討した。いずれの場合も、トリクロロ錯体をホスファイド錯体へ変換する反応はうまく進行しなかった。そこでClのアルキル化を行った。その結果R=Hの錯体のベンジル化によりトリベンジル錯体が生成することが分かった。しかし、この錯体のリン部分は中心金属に配位していなかった。ところが、この錯体を80℃で加熱すると、金属上のベンジル基とリン上のHがカップリングしてトルエンが脱離し、ジベンジルホスファイド錯体が生成することが分かった。この錯体は不安定で単離には至らなかった。これに対して、エーテル中で3当量のアリルグリニヤ試薬を反応させると、ホスファイドが配位したジアリル錯体{C_5H_4CH_2CH_2P-Mes}M(C_3H_5)_2が褐色粉末として単離できることが分かった。 次に、この単離したホスファイド錯体とアルコールとの反応性を検討した。嵩高い2,6-di^tBu-phenol(HOR)との反応では、まずM-P結合にO-Hが付加してリンが配位していない{C_5H_4CH_2CH_2P(H)-Mes}M(C_3H_5)_2(OR)が生成し、続いてプロペンが脱離してホスファイドが配位した{C_5H_4CH_2CH_2P-Mes}M(C_3H_5)(OR)が生成することが明らかとなった。
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