研究概要 |
2つの平面4配位金属錯体が、2つの架橋配位子によって辺を共有すると2核錯体となる。この2核錯体の折れ曲がり型には、それぞれのメタルのアキシャル配位座が交わる場所があり、この位置に基質がくると、基質は2つのメタルと同時に相互作用すると期待できる。このような相互作用は、複数のメタルによる基質活性化反応のモデルとして重要である。 本研究では、2つのホスフィド基をアルキル鎖で結んだ3種の架橋配位子MPE=MePCH_2CH_2PMe^<2->,PPE=PhPCH_2CH_2PPh^<2->,およびPPP=PhPCH_2CH_2CH_2PPh^<2->を用いて2核錯体の合成を行った。その結果、一般式(μ-bridge)-[M(DPPE)]_2X_2(M=Pd, Pt ; X=Cl^-,I^-,B(3,5-(CF_3)_2-Ph)_4^-)で表される2核パラジウム(II)および2核白金(II)錯体を得ることに成功した。これらのX線構造解析を行った結果、2つの架橋リン配位子と2つの金属原子が成す2つの"wing"の2面角が、エチレン鎖で結んだ架橋配位子MPEおよびPPEの錯体では約120°であり、プロピレン鎖で結んだ架橋配位子PPPの錯体では、やや大きな131°となることが判った。さらに、興味深いことにPPEおよびPPPの2核パラジウム錯体では、対イオンのハロゲンイオンがアキシャル配位座が交わる場所に位置し、期待どおり2つのメタルと同時に相互作用することが見出された。 一方、メタルとしてRh(I)を用いた2核錯体(μ-PPE)-[Rh(COD)]_2は、フェニルアセチレン(PA)に対して重合触媒として働き、立体規則性の高いcis-trasoidalポリアセチレンを与えることが判った。
|