研究概要 |
これまでに、ニトロシルクロム錯体[Cr(NO)(NH_3)_5]^<2+>(A)を含む、対イオンの異なる数種の錯化合物が合成されている。またこれら錯化合物の固体の色ガ対イオンにより異なることも報告されていた。しかし、X線結晶解析の報告はなく、また色の変化の原因もはっきりしていなかった。 私たちはAを含む、5種類の錯化合物の合成およびX線結晶解析を行い、これら錯化合物のAの距離・角度には大きな変化は見られないが、以下の特性に関してはかなり異なることが判明した。その結果を、錯化合物、色、極大波長(nm),O(NO)-H(NH_3,隣接する錯陽イオン中)水素結合(Å),^νNOの順に示す:A(PF_6)_2(red,2.399,579,1693), ACl_2(red-orange,2.749,588,1683),ACl(ClO_4)(brown,3.127,598,1710),ACl(PF_6)(brown,3.258,603,1713), and A(ClO_4)_2(green,3.595,623,1728)。これらを検討した結果、ニトロシル配位子の酸素原子と最隣接の錯体のアンモニア配位子との間の水素結合の強さの変化が錯化合物の色の変化の原因であることが明らかになった。 また、錯体Aで予想される3種のスピン状態、doublet(A2),quartet(A4),and sextet(A6)、のab initio計算をB3LYP/6-31G^*(6-31+G for NO)で行い、A2がX線結晶解析の結果と良い一致を示すこと示した。このことは、A(ClO_4)_2の磁化率(μ_<eff>=1.8BM)測定結果とも矛盾しない。 さらに、[Cr(NO)(CN)_5]^<3->(X線構造既知)、[Cr(CN)(NH_3)_5]^<2+>、[Cr(N_2)(NH_3)_5]^<3+>、[Cr(CO)(NH_3)_5]^<3+>、[Cr(O_2)(NH_3)_5]^<3+>の最適化構造を求めた。
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