研究概要 |
有機薄膜を用いた電子・光素子開発に関する研究は近年急速に進展しており、実用的な分子電子デバイス実現への期待が高まっている。分子デバイス開発にあたっては、有機分子の精密な配向・配列制御技術の確立が望まれており、磁場等を用いた有機薄膜の面内配向制御と薄膜面内の配向評価技術を確立することが重要である。本研究では、真空蒸着膜を強磁場中、無磁場中でそれぞれ作製し、膜の配向、構造をAFM, X線回折で評価するとともに、磁気異方性ユニットを組み込んだドナー分子の分子設計、合成を行った。 種々の機能性有機分子の蒸着膜を5Tの超伝導マグネット中で作製した結果、pryleneやP-sexiphenyl等のベンゼン環有する物質において顕著なモルフォロジーの変化や、配向の変化が認められた。また、面内配向評価技術の確立に関しては、BEDT-TTF, TTF-TCNQ,ステアリン酸、prylene、p-sexiphenylのNaCl(001),KCl(O01)KBr(001)基板上のエピタキシャル方位関係をX線回折により決定することに成功した。一方、分子設計、合成に関しては、磁場配向に必須の磁気異方性ユニットとなるベンゼン環等の芳香環を組み込んだ、DB-TTF, TET-DB-TTF, TIP-DB-TTFの分子設計を行い、その高効率合成法を確立した。また、基本性能として、すでにその性能が認知されているBEDT-TTFと比較し、今回新規に合成した磁気異方性ユニットを組み込んだTTF誘導体の性能に遜色がないことがわかった。また、長鎖アルキル基を介して末端チオール変成も完了し、液中自己組織化により形成した単分子膜が十分なドナー性能を持つこと、磁場中で配向を変化させることが明らかとなった
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