研究概要 |
圧力誘起超伝導体Cs_3C_<60>の超伝導発現機構の解明のために,Cs_3C_<60>の構造と物性を常圧から6GPaまでの圧力下で詳細に調べた.常圧では,Cs_3C_<60>には体心斜方相(Immm)と,マイナー相として単純立方相(A15:Pm3^^-n)の二相が存在することを確認した.さらに,体心斜方相においては,Csのサイト占有が完全でないために,Cs_4C_<60>との間に固溶体的な中間相が存在できることが予想されたために,中間相を作製して構造と物性を調べた.Cs_<3.00(6)>C_<60>および中間相であるCs_<3.5(1)>C_<60>においては,常圧では,上述の二相が存在し,30kbar以上ではA15相が消滅することがわかった.また,A15相が50%程度存在する試料の作成に成功した.ESRから,Cs_<3.00(6)>C_<60>およびCs_<3.3(1)>C_<60>は2-300KでPauli常磁性的であったが,ΔH_<pp>/(Δg)^2はElliot-Yafet関係を示さず,金属的と断定できなかった.一方,中間相の電気抵抗率ρは金属的な温度特性を示さず,ホッピング伝導もしくはfluctuation誘起トンネル伝導を示唆する温度特性を示した.中間相の交流帯磁率は,10kbarまでは1.5K以上で超伝導転移を示さず,中間相が超伝導相ではないことを示している.Cs_XC_<60>以外にも,二次元ポリマーであるNa_4C_<60>およびDy@C_<82>の構造および電子輸送の温度・圧力依存性を調べた.Na_4C_<60>ではESRから金属的特性が示唆されたが,ρの温度依存性はギャップエネルギーE_g=0.5-0.8eVの半導体であることを示した.Na_4C_<60>は,高圧では三次元ポリマー化の傾向を示した.Dy@C_<82>異性体I固体では,310Kで構造相転移が確認され,低温相の空間群がPa3^^-と決定できた.常圧では,Dy@C_<82>は0.2eVの小さなギャップを有する半導体であった.これは,高圧で金属化などの興味深い特性が見いだされることを示唆する.
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