研究概要 |
(1)高圧下における純有機弱強磁性体の転移温度の上昇と、磁気モーメントの大きさとの相関に関する研究:愛媛大・向井らが合成したTOV(Tc=5.0K;1,3,5-triphenyl-6-oxoverdazyl)、およびPalacio等が報告しているp-NCC_6F_4CNSSNの高圧下磁気測定を行い、純有機弱強磁性体では、転移温度を上昇させれば、磁気モーメントの大きさが犠牲になることを、見出し、平均場近似に基づく現象論を構築した。 (2)TEMPO系純有機強磁性体における、加圧下磁気転移温度の下降・上昇の繰り返し現象と反強磁性転移:電通大・野上等の開拓した有機強磁性体p-Cl-C_6H_4CH=N-TEMPO(Tc=0.28K)の転移温度が9kbarの高圧までに、下降-上昇-下降-上昇-下降の後上昇に転じることを見出すとともに、この過程で反強磁性への転移、磁気的次元数の低下を加圧下磁気比熱測定から明らかにした。これらの実験事実は、メチル基の回転に伴う水素が重要な役目をすることを示唆することを見出した。 (3)純有機強磁性NN'-dioxy-1,3,5,7-tetramethyl-2,6-diazaadamantaneの加圧効果:現在、純強磁性体中で、最も高い転移温度(Tc=1.48K)をもつNN'-dioxy-1,3,5,7-tetramethyl-2,6-diazaadamantaneの加圧下磁気・熱測定を行っている。帯磁率の圧力依存性を調べた結果、磁気転移温度は下降し、β-p-NPNNの加圧効果に似た振る舞いをしている。今後、熱測定の結果と対応させて追究する。 (4)ハルデンギャップの加圧効果・不純物効果:向井らによって有機物では初めての不純物置換が可能となった(p-CyDOV)_<1-x>(p-CyDTV)_xの低温比熱測定を行い、無機物スピンパイエルス系CuGeO_3の不純物効果と同様なスピンパイエルス-反強磁性共存濃度域の存在を純有機系で初めて確認した。
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