研究概要 |
末端にOH基を持ち,分子内で水素結合を形成することができる直鎖状配位子3種を合成した.ピリジンジカルボン酸とエチレングリコールから合成した化合物1は水と1:1錯体を形成し、二分子のOH基どうしの水素結合によって擬似環状化合物を形成することがX線結晶構造解析より明らかとなった.1の溶液中および気相中での構造をそれぞれ^1H NMRとFABおよびESIマススペクトルによって検討した結果、溶液中,気相中でも結晶に近い構造をとっていることがわかった.ピリジンジメタノールジトシラートとカテコールから合成した2およびピリジンジメタノールとサリチル酸から合成した3は分子内水素結合によって擬似環状構造および直線状構造をとることが量子力学計算によって推測された.これらのX線結晶構造測定の結果、予想通り2は擬似環状構造であり、3は直線状構造であることがわかった.1,2および3のナトリウムイオンに対する錯安定度定数を重アセトニトリル中,^<13>C NMRで測定した結果、Na^+に対するlogKはそれぞれ2.5,2.3および1.3であった.すべてのアルカり金属に対する気相中での相対的な安定度をFABマススペクトルによって測定したところ,その安定度の順は1>2>>3であり,溶液中での相対的安定性と一致していた.また,いずれの化合物もナトリウムイオンに対して選択性を持っていることがわかった.2のNaSCN錯体のX線結晶構造解析によって,Na^+はポーダンドが形成する擬似環状構造の中心に位置していることがわかった.この錯体では、ナトリウムイオンの上下に他の分子のベンゼン環が覆っており、その距離からNa^+-π相互作用の存在が示唆された.
|