研究概要 |
ペルオキシナイトライト(ONOO^-)の生体関連物質に対する反応性を体系的に調べるため、一連の置換フェノール、N, N^-ジメチルアニリン、スチルベンに代表される中性オレフィン、ジフェニルアセチレンに代表される中性アセチレン、1,4-ジフェニルブタジエンや1,4-ジフエニルブテンインに代表される活性ジェンやエンインを基質に選んで、pH7のりん酸緩衝液およびアセトニトリル中の種々の条件下において、アジ化ナトリウムのオゾン酸化で発生させたペルオキシナイトライトと反応させ、その生成物分布を検討した。 フェノールの場合には芳香環のニトロ化とヒドロキシル化が主として起こり、キノンやシクロヘキサジエノンなどの酸化生成物があい伴って生じたが、核置換生成物の置換パタンは通常の求電子置換反応の特徴を示している。N, N-ジメチルアニリンの場合には、脱メチル反応が認められ、ニトロソニウムイオンの関与が示唆された。スチルベンからはベンジル、エポキシド、ベンンズアルデヒドなどの酸化物を中心に、少量の環ニトロ化物が得られた。炭素鎖の開裂機構は現在のところ不明であるが、エポキシド、ジオール、ケトールなどが同一条件下で酸化開裂されないので、これらを経由していないことは確かとみられ、興味深い知見である。ジフェニルアセチレンはベンジルおよび少量の環ニトロ化合物を与えた。興味深いことに、後者のニトロ化物ではオルトおよびメタ異性体のみが生じているが、現在のところ理由は判らない。相対反応性はオレフインのほうがアセチレンよりもやや大きいが、イオン反応から期待されるような大きな反応性の相違は認められない。さらに奇妙なことに、オレフィン結合とポリエン結合との間にも、顕著な相対反応性の相違は認められなかった。
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