研究概要 |
本課題では、主に分裂酵母をモデル生物として用いて、mtDNAの維持・修復機構を研究した。その機構として、塩基除去修復がミトコンドリアでも行われている可能性と、エンドヌクレアーゼG(エンドG)のようなミトコンドリアエンドヌクレアーゼが損傷mtDNAを分解・除去することにより、正常mtDNAを維持していることが挙げられる。本研究では、塩基除去修復に関わるDNAグリコシラーゼ(NTH1)のミトコンドリアへの移行を解析し、NTH1のN末端配列に核とミトコンドリアへの移行シゲナルがあることを見い出した。次に、エンドGの活性はミトコンドリアにあるリン脂質、ポリアミンや一本鎖結合タンパク質により影響されることを見い出した。ミトコンドリアエンドヌクレアーゼの生理機能を解析するため、分裂酵母の酵素(SpNUC1)のcDNAをクローニングした。SpNUC1は322アミノ酸からなり、エンドGや出芽酵母のNUC1と高い相同性を示した。ゲノム上ではSpnuc1は3つのエキソンからなり,全長1.31kbにわたっていた。SpNUC1-GFP癒合タンパク質をS.pombe内で発現させたところ,本酵素はミトコンドリアに局在することがわかった。さらに,SpNUOC1は不活性型でコードされ,N-末端を切除されることにより活性化することがわかった。基質特異性はssDNA>RNA>>dsDNAで,活性にMg^<2+>(Mn^<2+>)を必要としていた。遺伝子破壊株やSpNUC1過剰発現株を用いた解析で、ミトコンドリア機能やmtDNA量の形質変化を見い出すことができなかった。しかし、SpNUC1の発現量が、生育の定常期から死滅期にかけて数倍増加し、またDNA損傷剤で強く処理することにより増加した。これらのことはSpNUC1がプロゲラム細胞死と関連していることを示唆している。
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