研究概要 |
1.多女王性のカワラケアリにおいて,2倍体オスが30コロニー中6コロニー(20%)で発見された.本種の2倍体オスは2倍体精子を形成し,生殖可能と推定された. 2.カワラケアリにおいて,2倍体オスと処女女王の交配実験を行い,3倍体のワーカーを得た.彼女らは採餌,育児,巣の清掃など,コロニーの仕事に従事し,コロニーの発展に寄与した.さらに,フィールドのコロニーから3倍体オスが発見された.その染色体標本から,3倍体オスは減数分裂を行わず,3倍体精子を作ることが示唆された. 3.マレーシア,ウルゴンバック産の多女王性ハダカアリCardiocondyla kagutsuchiにおいて,新しいタイプのオス2型(無翅オスおよび短翅オス)を発見し,それらの繁殖特性を調べた.本種の無翅オスは他のハダカアリ類の無翅オス同様,巣内において他オスを攻撃し,多数の新生女王と独占的に交尾した.短翅オスは,飛行機能のない短い翅を有するが,頭部や前胸部は無翅オスに類似しており,他オスを攻撃し多数の新生女王と交尾した.一方,発達した単眼,高い交尾能力など,典型的な有翅(長翅)オスの特徴も有していた.本種におけるオス2型は,典型的なオス2型(無翅オス/長翅オス>から単型オス(無翅オス)への進化を探る上で,貴重な材料であると考えられる. 4.単女王性と多女王性アリにおいて,2倍体オスの出現頻度を比較した.2倍体オスの出現は,単女王性のトビイロケアリにおいては調査した18コロニーすべてにおいて見られなかったが,近縁の多女王性カワラケアリでは30コロニー中6コロニー(20%)で確認された.しかし,単女王性のムネボソアリと多女王性のハヤシムネボソアリでは,それぞれ4/13、4/14コロニーで2倍体オスが出現し,両者の間には違いはないと思われる.2倍体オスの出現頻度は分類群によって大きく異なると考えられる。
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