研究概要 |
広島県太田川河川敷のヤハズソウ群落を対象に、エルゴステロールを指標にして、根外の菌糸を含む全VA菌根菌バイオマスの推定を行なった。根内のエルゴステロール量は、月日の経過とともに増加する傾向があり、開花期(8月)では個体当たり4.96μgであった。ポット栽培で求めたVA菌根菌バイオマスの根内外比と菌糸体のエルゴステロール含量を用いて推定した野外8月の全VA菌根菌バイオマスは、個体あたり30.3mgと推定された。このVA菌根菌バイオマスは、根乾重の43%、植物群落内の全土壌有機炭素量の3.6%に相当し、炭素の大きなシンクであることが明らかになった。 VA菌根菌のバイオマスに対するリンの影響を調べるため、ヤハズソウと菌根菌Gigaspora margaritaを用いてポット実験を行なった。砂1kgあたり0,0.1,1,5,10mgPになるようにNaH_2PO_4溶液を加え、人工気象機内で60日間栽培した。リン濃度5および10mgP kg^<-1>では,根内の菌根菌バイオマスの低下が認められたが,根外の菌根菌バイオマスにはリン濃度による差は認められなかった。 広島県太田川の州に生育するネコヤナギ、アカメヤナギ、タチヤナギについて,菌根の形成状況を調査したところ、いずれの種にもVA菌根と外生菌根の形成が認められた。しかし、VA菌根の感染率は低く,ネコヤナギ実生とG.margaritaを用いたポット実験でも菌根菌接種による成長促進は認められなかった。また、施肥実験から窒素が実生の生育の制限要因になっていることが示唆された。
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