配分額 *注記 |
3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
2002年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2001年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2000年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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研究概要 |
1983年以来,熊本県天草下島の富岡湾に面した砂質干潟では,ハルマンスナモグリ(甲殻十脚目,以下スナモグリ)個体群が干潟全体にわたって高密度で安定していたが,1995年以降激減した.その原因として,同時に急増したアカエイの捕食圧と基質攪乱が疑われた.スナモグリ個体群に対するその影響を推定するために,干潟に現れるアカエイ摂餌痕生成の1年間にわたる変化,摂餌痕内のスナモグリ減少率,アカエイ消化管内容物の調査などを行った.摂餌痕は6月から8月に主に出現し,1日あたり平均2.3〜3.4個/100m^2生成された.摂餌痕におけるスナモグリ平均減少率は,62〜78%の範囲にあった.アカエイの基質攪乱によって,とくにスナモグリ幼稚体が影響を受けた.また,アカエイ消化管内から見つかるスナモグリは成体が主であった.3ヶ月間に,もとの個体群の6%(高潮帯)から19%(低潮帯)が消失すると推定された.これが6年間続くとすると,アカエイの捕食圧/基質攪乱の増加は現在までのスナモグリ個体群の減少を十分に説明できた.スナモグリ密度の減少により,かつて本種の基質攪乱作用によって絶滅させられたイボキサゴ(巻貝)とその付随種5種(テナガツノヤドカリ・ユビナガホンヤドカリ,イボキサゴナカセクチキレモドキ=外部寄生貝,ミクリガイ(巻貝)・Cryptocelis amakusaensis(ヒラムシ)=捕食者)が復活した.これらの個体群は,天草下島東海岸にある2大干潟(茂木根,本渡)に存続していた.これらが富岡湾干潟への幼生の供給源となっていることが確認された.富岡湾干潟では,捕食者アカエイが優占種スナモグリを専食し,これがもたらすトップダウン制御によってベントス群集構造が決定されていることが明らかになった.また,群集の一連の再構築過程は,メタ個体群の分集団(=地域個体群)間のソース-シンク関係によって決定されることも明らかになった.
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