研究概要 |
本研究では,Mg-脱離物質に関してクロロフィル分解の本来の基質であるクロロフイリドaの代わりに人工基質であるクロロフィリンを用いて解析を行った.研究過程で新たに,熱に安定なペプチド性の低分子物質,Metal chelating substance(MCS)に加えて,同様のMg脱離活性を持つタンパクの存在が明らかになった.その概要は以下のとおりである. 今回、人工基質であるMg-クロロフィリンを用いて活性測定を行ったところ,MCS同様のMg脱離活性を持つタンパクの存在が明らかになった.そこで,このタンパクをMg-releasing protein(MRP)と名づけ,精製し,その性質の決定を行った.精製の結果,MRPには少なくとも3つのアイソザイムが存在することが明らかになり,そのうち2つの分子量は約20,000と約43,000であった.分子量20,000のものは,阻害剤の影響について,ペルオキダーゼと同様なフリーラジカルの関与を示唆する結果が得られたが,吸収スペクトルは西洋わさびペルオキダーゼとは大きく異なっていた.また,クロロフィル分解の本来の基質であるクロロフィリドaを基質として活性測定を行ったところ,Mgの脱離はみられず,Mgの脱離または運搬に関与するが,クロロフィルの分解系に関与するMg-デケラターゼとは異なることが明らかとなった.分子量43,000ともう1つのアイソザイムについては,現在研究中であり,今後はこれらの性質を決定し,またN-末端のアミノ酸配列を基に,遺伝子配列の決定を行う予定である.
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