研究概要 |
本研究の目的は、脊椎動物の脳-下垂体の進化を研究するために脊索動物門頭索動物亜門のナメクジウオに注目し、その神経・内分泌系の解明を行なうことである。次の研究に着手し、成果を得た。 1.下垂体相同器官周辺のcDNAライブラリーを作成し解析した。下垂体ホルモンや関連遺伝子は得られず、Hatschek's pitの分泌顆粒の物質的手がかりは得られなかった。しかし、Insulin like growth factor binding protein, Insulin like protein, Ferritin, Amyloid, Caldium関連タンパク質などの機能タンパク質の遺伝子を得、進化系統学的解析をおこなった。 2.神経管のみを採取し、cDNAライブラリーを作成してEST解析をおこなった。理化学研究所の阿形清和・倉谷滋両先生との共同研究として平成14年から開始した。交付期間終了直前に配列データが出始めたため、継続となったが、有益な成果が得られつつある。本研究に関連する遺伝子には、Parathyroid hormone, RFamid, calcitonin, TGR, EGF, IGFなどがある。また、脳・神経系に特異的な既知のcDNAと相同な遺伝子が多数得られ、ナメクジウオから脳・神経系の解明が一気に進むことが予想される結果となった。 3.下垂体相同組織から抽出したRNAからRT-PCR法で脊椎動物のホルモンに相同なクローンの探索を行なった。しかし、ペプチドホルモンのように脊椎動物間で構造と機能の変化が著しいタンパク質の遺伝子を得ることは困難であった。網羅的クローニングが個別のクローニングを時間的に追越した上に有効であった。 4.ナメクジウオの遺伝子をプローブとしたin situ hybridization法の確立を行なった。 5.ナメクジウオの産卵行動・生態の解析を行ない、幼生飼育法を向上した。
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