研究概要 |
孵化後すぐにニワトリの松果体を除去すると,脊柱形成に異常が生じ,2週間後には100%の個体に側弯が生じる。この実験モデルは脊柱形成過程を時間・空間レベルで調べることができる優れたモデルである。そこで本研究は、松果体除去による脊柱側彎変形の発生原因を探るために,1)急激な体重増加がもたらす座屈の可能性と,2)脊柱変形が生じる前に椎骨の前後方向において成長差が生じている可能性を調べた。また合わせて,松果体に内在する体内時計が脊柱変形に関わる可能性についても実験を行った。 その結果,孵化後1日目に松果体を除去すると100%の個体に脊柱変形が生じるのに対して,5日目に松果体を除去すると80%,2週目に除去すると55%,3週目になると約20%の個体にしか脊柱の変形が発生しなかった。また,その時の松果体内の概日時計について調べるために,恒明条件下における血中メラトニン濃度の日内変化を測定した。その結果,1,3日齢では明瞭な概日リズムが認められたのに対して,3週齢ではリズムは消失していた。このことは脊柱変形の原因として松果体に内在する時計の重要性を示唆するものである。次に松果体除去後ニワトリを3群に分け、100%、50%,25%体重群を作成して脊柱の変形度を調べた。その結果、100%体重群では平均50度の脊柱変形度を示したのに対して,50%体重群では38度に,また25%体重群では13度にまで減少した。また,脊柱が曲がり始める前の4日令に椎骨を採取し,椎骨の前後の成分における骨化度を組織学的手法を用いて比較したところ,前方部分には両群で差がなかったのに対して,後方部分では松果体除去群の方が対照群に比べ有意に骨化が進んでいることが明らかとなった。これらの結果は,脊推の前後成分における成長の不均衡と急激な荷重による座屈現象が脊柱変形の発生要因である可能性を示すものである。
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