研究概要 |
サザエIDO型ミオグロビンのcDNA配列の一部をプローブにして、サザエgenomicライブラリーをスクリーニングし,複数の陽性クローンを得た.その配列を決定したところ,IDO遺伝子のものではなく,IDO型ミオグロビンのものであった.このクローン及びRCRで補完した配列を使って,サザエIDO型ミオグロビンの完全な遺伝子構造を決定した.この構造(14-exon/13-intron)をヒトのIDO遺伝子構造(10-exon/9-intron)と比較すると,9つのイントロンの位置が完全に一致していた.これらのことは,ヒトと軟体動物が分岐してからのおよそ5億5000万年の間,これらのイントロンが保存され続けてきたことを意味する.一方,PCR増幅されたトコブシ・ミオグロビン遺伝子断片の副産物の中にIDO断片と推定されるものがあった.これをプローブにして,トコブシgenomicライブラリーをスクリーニングしたところ,IDO由来と推定される遺伝子の断片を含むクローンを得ることができた.このクローンを手がかりに,現在,IDO遺伝子の全配列決定に取り組んでいる.予想されるコード領域にプライマーを設計し,筋肉及び消化管由来のcDNAプールを鋳型にしてPCR増幅したところ,消化管において特に強く増幅が見られた.このことはIDO遺伝子と推定されているものが,実際に消化管において発現していることを示している.軟体動物の腹足類の進化の過程で何時生じたのかを明らかにするために,分子マーカとしてアルギニンキナーゼを用い,軟体動物腹足類の分子系統を明らかにした.これらの結果から,IDO型ミオグロビンの誕生はおよそ1億5千万年前にさかのぼると推定された.また,アマオブネガイは原始腹足目でありながら通常のミオグロビンを持つ.この16kDaミオグロビンの構造と機能の解析を完成させた.
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