研究概要 |
マキ科は裸子植物の中でその形態や生態が最も多様化したグループである.その中でもマキ属(Podocarpus)はマキ科の中でも最大の属であり大部分が南半球に分布しているために植物地理学的な研究対象として適している.本研究ではマキ科全体の構成属を含めて系統解析を行って,マキ属の範囲や混乱してきた分類を検討した.そしてマキ属の系統進化について考察を進めた.葉緑体DNA上のmatK遺伝子塩基配列等を基にして系統解析を行った結果,マキ属はこれまでに提唱されてきたAfrocarpus, Nageia, Retrophyllum, Decussocarpusと単系統群を形成しており,マキ属を広義に捉えても問題はないことが判った.その系統関係は((Afrocarpus, Nageia), (Retrophyllum, Decussocarpus))であった.また,これまでマキ属の中に含められることもあったParasitaxus, Prumnopytis, SundacarpusはProdocarpusとは系統的に異質であり,マキ属の内部に入れる分類体系は棄却されることが判明した.マキ属内部の系統はde Laubenfels (1969,1985)による2亜属: subgenus PodocarpusとFoliolatusへの分類は支持されて,狭葉・広葉の形態の別や気孔周辺のFlorin ringの有無が系統を反映していることが示唆された.また,マキ属はゴンドワナ大陸が分裂を終えた中生代中後期(白亜紀)までにこの亜属レベルでの進化は終えており,亜属ごとに地域的に種分化と分布域拡大を起こしたことが判明した.北半球にまで分布するアジアと北米の種群はそれぞれオセアニア+マレシア地域と南米地域の種群から分化したことが示された.
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