研究概要 |
αレベルの分類 Britz and Kottelat(1999)は,Indostomus paradoxusのみが知られていたインドストムス科にI.spinosus, I.crocodilusの2新種を加え,合計3種に分類した。本研究ではこの分類の検証も含め,走査型電子顕微鏡による体表構造の解析を行い,本研究の材料をI.crocodilusと同定した。一方,尾柄部等に外見上明らかに異なる特徴を持つ個体も発見され,今後,成長・性差に留意しながら再検討する必要があるものと判断された。 染色体 インドストムス類は小型で腎臓処理が事実上不可能なため細胞培養を試みた。鰭上皮細胞の培養は良い結果が出せなかったので,鰓を用いて簡易培養法で染色体標本の作成を試みた。その結果,本種の染色体数は2n=30と決定された。 腎臓構造 I.crocodilusには,数は少ないが発達した糸球体が存在することが確認された。 骨学的形質 前上顎骨は著しく小さく,その関節突起は発達しないという特徴が認められた。他に,射出骨は3個で肩甲骨とほぼ同大であること,後擬鎖骨が無いこと,尾鰭骨格の要素は完全に癒合しており,分離・独立した骨格要素が認められないことなどの特徴が認められた。 現時点で得られた情報を元に,インドストムス類の系統関係を考察すると,骨学的にはトゲウオ目とのある程度の関連も認められたが,染色体や腎臓構造といった情報からは,トゲウオ目との直接的な系統関係は示唆されなかった。このことは,インドストムス類がトゲウオ目と姉妹関係にあることを否定するものではないが,Nelson(1994)によって主張されたように,本グループをトゲウオ目内の1亜目として扱うことにはかなり問題があるものと判断された。今後は,分子系統学的手法を併用するとともに,周辺分類群の生物学的データを収集・検討して,再度,系統構築を試みる必要があるものと思われた。
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