カヤツリグサ科スゲ属植物には多くの種で種内異数体が存在する。ショウジョウスゲには連続した染色体数が報告されており、集団内でも個体間で染色体数が異なる種内異数体が見られる。本研究では、日本各地より採集した21場所産356株のショウジョウスゲの体細胞分裂および減数分裂中期染色体の対合を分析した。さらに、蛍光ハイブリダイゼーション法(FISH)を用いて種内異数性の成因を調べた。 1.減数分裂第一分裂中期における対合分析 ショウジョウスゲの減数分裂第一分裂中期において、2n=26~32の7種類の異数体が観察された。ほとんどの異数体でIII価染色体が1個から3個見られ、大型、中型、小型染色体からなる異型対合していた。これらの結果より、異型III価染色体は染色体の切断や融合などの構造変異により生じ、集団内で維持されているものと推定される。また、2n=41、46、64の3種類の種内異数体がそれぞれ1株見つかった。これらの異数体では減数分裂中期染色体の解析から同型III価染色体やIV価染色体が高頻度で見られた。従って、この3種類の種内異数体で見られる多価染色体は、雄性配偶子または雌性配偶子の非減数の結果生じたものと推定された。 2.FISH法を用いた種内異数性の解析 18Sおよび5S rDNAをプローブとしてFISHを行った結果、大型染色体2対と中型染色体2対の、合計8本の染色体の両端にシグナルが観察されたが、異数体の成因と考えられるIII価染色体やI価染色体にはシグナルは観察されなった。このことから、種内異数体の成因である構造変異は、18S rRNA遺伝子や5S rRNA遺伝子を持たない染色体に生じ、その後、III価染色体は染色体の不等分配により集団内で維持されていることが明らかになった。
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