研究概要 |
2年間の研究成果を以下にまとめる。 (1)III_2-VI_3化合物半導体薄膜の成長は,これまではGaAsやGaPなどのIII-V化合物半導体基板上で専ら行われてきたが,デバイス応用を考える上ではSi基板上への成長が重要である。特にGa_2Se_3は格子定数がSiとほぼ一致し,格子不整合欠陥のない良質な薄膜の成長が期待される。そこで,single-domain2×1構造を持つ微傾斜Si(001)清浄表面上にGa_2Se_3薄膜の成長を試みたところ,基板温度480℃,VI/III比1000の条件下で,Ga空孔が規則配列した単結晶Ga_2Se_3薄膜を成長することに成功した。また,基板温度が500℃を超えると空孔は規則配列せず,一方420℃より下では一部が多結晶成長し膜質が低下することも判明している。さらに成長した薄膜のフォトルミネッセンスを6.5Kで測定したところ,650nm〜1000nmの波長範囲にわたるブロードな発光ピークが観察された。次に光物性に異方性が現れるかどうか検証するため,薄膜からのフォトルミネッセンスの偏光依存性を調べた。その結果,入射光の偏光に対する発光強度の変化は観察されず,またルミネッセンス光自体の偏光も観察されなかった。これまでに斜方型の空孔規則配列Ga_2Se_3では光学異方性が観察されていることから,本研究で作製された薄膜は単斜型の空孔規則配列構造を持つのではないかと考えている。 (2)C_<60>分子を選択成長した後酸化物薄膜で被覆し,その後C_<60>分子を酸化除去することで1nm径の空孔を規則配列することを目指しているが,bilayer-GaSeで終端したSi(111)表面が平坦かつ不活性であり,C_<60>分子の選択成長基板として有望であることを見出している。 さらに,直線状の空孔列を結晶内に形成することを目的として,C_<60>分子の直鎖状ドメインを固体基板上に形成することを試みた。4°傾斜Si(111)基板表面を加熱清浄化した後Se, Gaのbilayerを用いて終端したところ,bunchingしたステップ列が約200nm間隔で平行に走る不活性表面が得られた。この基板上に基板温度190℃でC_<60>分子を照射したところ,ステップ列に沿って最長20μmのC_<60>直鎖状ドメインが形成された。現在,このドメイン上に酸化物層を形成し,さらにアニールによってC_<60>ドメインを酸化分解し,空孔列を形成する,という実験を進めている。
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