研究概要 |
この研究では,ダイヤモンド膜を配向結晶粒で構成したとき,常磁性欠陥密度がどのようになるかを調査した。バイアス印加マイクロ波プラズマCVD法で,メタン,二酸化炭素,水素を用いて,シリコン(100)基板上に,種々の形態をもつ(100)配向ダイヤモンド膜を作製した。高配向膜を得るために,炭化処理とBEN(bias-enhanced nucleation)処理を施し,シリコン基板上に格子状のナノパターンを形成することが重要であるが,これらの詳細については未知の部分が多い。我々はマイクロ波電力,メタン濃度,前処理時間,ガス圧力,バイアス電圧をパラメーターとして,ナノパターンを形成し,さらに,この上に成長させたダイヤモンド膜の品質について調べた結果,以下のことが明らかになった。 1.鮮明なナノパターンを付けるにはマイクロ波電力,ガス圧,処理時間,バイアス電圧が非常に重要なパラメータである。 2.ナノパターンを鮮明にすることがダイヤモンドの(100)方位の配向性を良くするためには必要であるが,BEN処理時間を長くして,過度に鮮明にすると配向性はかえって悪化する。 3.前処理後のダイヤモンド成長は二酸化炭素を添加しないで,メタンと水素だけを用いる方が良い。 4.膜中の常磁性欠陥については,H1センター以外に2種類のセンターが存在する。 5.パターン形成,ダイヤモンド成長プロセスを最適化して作製した膜においても,やはり,10^<18>cm^<-3>の常磁性欠陥が存在する。これは配向化により,膜中に様々な応力が残存することに依る。 6.二酸化炭素を添加して作製させた膜で,新たなESRセンターを発見した。
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