研究概要 |
V字スイッチングは閾値も履歴も無く,低電界で一様均一に起こり,TFT駆動に適している.キラルスメクティック液晶におけるスイッチングなので高速応答であり,ディスプレイへの応用が期待されている.本研究の目的はV字スイッチングの発現機構を解明することである.2000年度は,液晶の反強誘電性を安定化している分子間相互作用を明らかにした.これに基づいて,2001年度には,強・反強誘電性の競合を副次相の出現およびV字スイッチングの2側面から研究し,下記の成果を得た (1)2つの階段が現われうる.すなわち,SmC_α^*相も階段である(単一の相ではない). (2)カシミール力を考慮すれば,同時に,しかもごく自然に,2種類の階段の出現を説明できる. (3)カシミール力の原因となる自発分極としては,傾き面に垂直な通常のものばかりでなく,離散フレクソエレクトリック効果によるものも新たに考慮する必要がある. (4)SmC_A^*とSmC^*との自由エネルギー差は僅かなものであり,方位角の自由度を考慮すると,その間の障壁も低い. (5)自由エネルギー障壁が著しく低く,強・反強誘電性が競合していることは,良好な配向,均一なV字スイッチングの実現にとって重要なことである. (6)もっと重要なのは,アンカリングの方位角依存性が著しく低減し,SSFLC状態が不安定になっていることで,これを可能しているのが2軸性アンカリングである. (7)分子長軸まわりの回転がより分極しやすい分子短軸を傾き面と平行にバイアスするとき,2軸性アンカリングが有効に作用する. (8)このようなバイアス回転はコノスコープのメラトープを"フェリ"的なものとする. (9)さらに,薄いセルでは反強誘電相の構造を壊す. (10)V字尖端の配向もスイッチング過程も様々で,協調回転やランジュバン過程は1側面にすぎない.
|