研究概要 |
本研究の目的は,高速電子回折(RHEED)の測定において,入射角を変化させる代わりに,入射電子線の表面垂直方向に角度幅を持たせた1次元収束ビームを作成し,その回折パターンを測定する事で,各反射点の入射角変化に対応した強度変化のデータ(ロッキングカーブ)を一つの画像上に撮影し,短時間にロッキングカーブを得ることにある。昨年度(平成12年度),磁場偏向により素早く入射角を0.5°〜6°まで変化させて疑似1次元ビームを作り,CCDカメラを用い回折パターンを記録し,その回折像からロッキングカーブを求めたところ,これまで18秒程度必要であった観測時間が0.3程度まで短縮できることが分かった。 今年度は,この測定法を実際の動的構造変化の解析に適用した。RHEEDの情報は入射電子線のビーム経内の平均的な情報であるため,表面の一様な変化が期待できる現象であり,時定数が数十秒以上の動的変化に適応可能である。そこで,高濃度にボロン(B)添加したsiの焼鈍による(111)表面への析出過程のその場観察を行なった。この試料は加熱によりバルク内のBが表面に析出し,アドアトムの真下のS5サイトに配置し√<3>×√<3>構造を形成する。この析出過程の時定数は1分間程度であり,1秒間隔で10分間の連続測定を試みた。その結果,連続した表面構造変化を反映したロッキングカーブを観測する事が出来,析出過程の連続的な構造変化をとらえることに成功した。 現在,動力学的回折理論による強度解析を行っており,Bの析出量を変化させることで,焼鈍中のロッキングカーブ曲線の特徴的な変化は説明できるが,これでは不十分で,析出過程では多くの表面原子の欠損を考慮する必要があると考えられる。
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