研究概要 |
実験装置は,散乱槽本体を交換すると共にイオンポンプも交換した。ベーキングの後10^<-10>Torrの真空がたやすく得られるようになった。Arスパッタ銃を作製しゲートバルブを介してとりつけ,銃運転後,中に残る不要なArガスを速やかに排気できるようにした。 試料としてAlエピタキシャル薄膜を作製し,透過型電子顕微鏡を用いて,薄膜の結晶性を調べた。以下のチャネリング実験には対応できる程度のエピタキシャル薄膜を得た。 試料表面処理として,作製したArスパッタ銃でスパッタ清浄化した。Arガス導入のため,試料付近の真空度が悪くなるためAl構膜に付着している自然酸化層はイオンポンプを止めた状況の高真空で削り取り,その後清浄化のため超高真空下で数原子層を目安に削った。 本実験として,奈良女子大学理学部の加速器からのH^+イオンをAl薄膜にチャネリングの条件で入射した。試料薄膜は,その表面がビームに対しほぼ90°に向いているものと,30°に向いているものの2つであり,チャネリング付近での出射イオン中の中性フラクションを測定した結果,2つの膜ともにチャネリングによって減少した。さらに,これらの結果のエネルギー依存性を調べた。膜の傾きにより,エネルギー依存性に違いがみられた。 対応する理論計算として,チャネリングイオンの中性フラクションをイオン軌道とともに計算した。この計算に,イオンが真空中に出た後の表面原子との衝突による寄与を加えることにより,実験結果で得られたエネルギ依存性が再現できた。
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