研究概要 |
過冷却大気中を振動する物体表面への着氷形状を数値流体力学の手法により予測するシミュレータの開発を行った.これまで着氷研究では主にLagrange的モデルが用いられてきたが,このシミュレータを構成する解析コードとしては混相流の2流体モデルに基づくEuler的アプローチの適用を試みた.これは振動物体まわりの着氷予測を考えると後者の方法がより簡単であると考えたためである.過冷却大気のモデルとして2流体Saffman方程式を用いるが,その際の主流としてNavier-Stokes方程式による粘性流とポテンシャル流を扱うことができる.このシミュレータによる解析結果から以下の点が明らかになった. (1)振動円柱表面の局所衝突効率の予測 任意の並進運動をする循環をもった円柱まわりのポテンシャル流れを主流とするSaffman方程式を解くことで,pitchingあるいはheaving運動する円柱まわりの局所衝突効率を求めることができた.また,計算結果を可視化することで,振動円柱まわりで非定常に変化する水滴粒子の密度場を捉えることができた. (2)粘性流を主流とする円柱の着氷形状予測 標準的な条件下(Re=10^4,St=10)でのシミュレーションにより円柱への粗氷形状の予測を行った.Euler的アプローチでは局所衝突効率を評価する際の粒子相の流速と着氷の成長方向に選択の任意性がある.これらの組み合わせによってそれぞれに特徴的な着氷形状が再現されることを確認した.粗氷の形成過程で最も重要な因子は局所衝突効率を考えられるので,このことはLagrange的アプローチに比べてEuler的アプローチの方が自由度の高いモデルであるといえる. (3)Saffman方程式による密度場 ポテンシャル流れに基づいて物体の淀み点近傍での密度場をStokes数の関数として解析的に求めることができた.これはMichaelの結果(1968)を一般化した結果である.
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