研究概要 |
高温高湿下の無損傷石英ガラス光ファイバの「遷移」現象を対象に,そのメカニズムの解明や予測・回避方法の開発を目的とする本研究の成果は以下のとおりである。 1.90℃水中のエイジング試験(無応力下での浸水試験)を行い,腐食表面を原子間力顕微鏡(AFM)により観察した。これにより,腐食表面は,十分に発達すればハースト指数0.85の自己アフィン性を維持して成長することが明らかとなった。また,腐食速度のゆらぎを考慮した確率微分方程式に基づき,表面形状の経時変化のシミュレーションを行った。その結果,上記実験事実が説明できることがわかり,腐食速度のゆらぎが本現象の主要因であることが明確となった。さらに表面粗さは時間のべき乗に比例して増加することがわかった。周期境界条件が適用できる境界要素応力解析コードを作成し,腐食表面形状の観察結果に基づき表面上の応力分布を調べた。その結果,不均一腐食表面の応力集中係数は表面粗さに1を加えた量に比例することがかわった。以上の結果を踏まえ,エイジングによる経時的強度低下の予測手法を考案した。 2.応力作用下の不均一腐食のシミュレーションを行った。その結果,「遷移」以前の静疲労では,高応力によって腐食が局在化し,主き裂が速やかに形成されること,また,主き裂の成長が寿命を支配することがわかった。また遷移以降では,応力効果が小さいためエイジングにみられるような不均一腐食表面の成長が支配的であることがわかった。 3.余寿命診断のためには腐食表面の観察が有用である。本研究ではAFMを応用して探針-試料表面間の接触剛性を検出する技術すなわち原子間力超音波顕微技術を用いて,良好な検出ができるための条件等について検討すると共に,申請者らが独自に開発した集中質量型高感度プローブの応用を試みた。ガラス材を対象にして,形状検出分解以下の微細な表面粗さや,その他の表面層の影響を受けた見かけの弾性係数を,定量的に評価できる手法を考案した。
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