研究概要 |
界面の微視的な構造を考慮して、剥離の物理モデルを構築し、剥離力を推定することを目的とする。 ミクロに見た場合、剥離と凝着の過程は逆であるが非常に似ている。そこで、剥離のシミュレーションを行うために基板と薄膜との凝着プロセスを境界要素法でシミュレートするプログラムを作成した。この凝着プロセスと同じアルゴリズムを剥離プロセスの解析に用いた。本研究では分子間力(二面間の距離の関数)を凝着メカニズムに用いている。凝着についてはJohnson, Kendall, RobertsらのJKR理論が実験と比較されており有効性も確認されている。そこで、本研究で開発したプログラムを用いて円柱と平面の凝着を解析し、その結果をJKR理論と比較することにより解析アルゴリズムの妥当性を確かめた。解析の基礎式およびメッシュ間隔を平衡分子間距離で無次元化した式を解析に用いた。これにより、解析精度の向上と数値の安定性を確保した。 1.円柱-平面モデルの凝着・剥離解析から,接触半径及び最大付着力を求め、他の接触理論と比較し,本解析の有効性を示した. 2.表面粗さを考慮した凹凸のある円柱-平面モデルの凝着・剥離解析から,凹凸のある円柱を押し下げた場合,原子間距離である200[pm]を保ちながら円柱が凝着し,それに伴い接触半径が大きくなるのが確認できた.最大付着力,接触半径,表面力から,凹凸の数と最大付着力の関係は比例関係が成り立つことがわかった. 3.表面応力と表面エネルギを用いた新しい凝着理論を考案し,その妥当性を実験と比較した.その理論はマイクロメータサイズの凝着領域に対しては,実験と良い一致を示した.ナノメータサイズにおける凝着について表面応力の影響が強くなるが,これに関する実験との比較は今後の課題である.
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