研究概要 |
高速進展き裂が分岐する力学的機構を解明するために、2種類の実験的研究を行った。その結果、以下の結論を得た。 [1]板厚3mm,分子量2×10^5のPMMA試験片中を650m/s以上の高速で進展しているき裂が2つに分岐する瞬間を高速度ホログラフィ顕微鏡法を用いて3コマ連続撮影した。得られた写真から,分岐の前後10μs以内におけるき裂開口変位(COD)を測定した。その結果、以下の3点が明らかになった。 (1)分岐前のCODはき裂先端からの距離の1/2乗に比例する。また、分岐後のき裂では、母き裂のCODが、母き裂仮想先端からの距離の1/2乗に比例する。 (2)き裂開口変位から求めたエネルギー解放率は、分岐の前後で連続である。即ち、分岐の瞬間におけるエネルギー解放率の不連続的な増加は起こらない。 (3)き裂先端に流入する単位時間あたりのエネルギー流量は、分岐の前後で連続である。これは、分岐の前後で、き裂速度が大きく変化しないことによる。 [2]2台のパルスホログラフィ顕微鏡法光学系を用いて、分岐直後の高速進展き裂を、試験片両面で同時撮影した。その結果、以下の事実が明らかになった。 (1)試験片両面でき裂形状が明らかに異なる場合がある。これらのき裂では、分岐は3次元現象である。 (2)上記のき裂において、表面き裂として発生した分岐き裂が、試験片の破断に至るまで成長する場合がある。 (3)試験片両面でき裂形状が似ている場合でも、2つの分岐き裂の開口変位は異なっており、分岐は、母き裂に沿った直線に対して非対称である。 [3]分岐の瞬間におけるエネルギー解放率の連続性は、き裂の分岐が3次元現象であることによると考えられる。
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