研究概要 |
まず,本研究の基礎として,強磁性体中の磁気弾性結合効果を含む種々の磁気・力学的挙動の定式化を行った.松本が提唱してきた磁場,磁化,応力,ひずみの間の微分型構成式を,磁気的な履歴を内部変数として含むように拡張することにより,より広い強磁性材料に適用できるようにした.拡張した構成式を代表的な強磁性材料に適用した結果,磁化曲線と磁気ひずみ曲線の応力依存性,ヒステリシス,非線形性をよい精度で表現することができることを示した. つぎに,磁気音響効果を材料中の応力と磁化の非破壊評価に応用した.強磁性体が磁場を印加されると,磁気弾性結合により磁化ベクトルの方向に音響異方性が生じる.平板に垂直入射する横波の速度は,その振動方向が音響異方性軸と一致する場合に極値をとるので,磁化ベクトルの方向を推定することが可能となる.さらに,音速の極大値と極少値の差は異方性の大きさによって定まることを応用して,磁化ベクトルの大きさも測定することが可能となる.このような磁化の非破壊測定は,電磁力応用機器の電磁場解析の妥当性の検証に応用することができ,より精密な設計が可能となる.さらに,従来の音弾性試験を磁場中で行うことにより,より高精度に応力測定が可能となることを示した. さらに,磁気音響効果の応用として,電磁音響深触子(EMAT)を用いた超音波深傷により欠陥の画像化を行った.まずEMATによる超音波の送受信の過程を,電磁場解析と超音波の伝ぱ解析によりシミュレーションした.内部欠陥を有する資料表面近傍をEMATで走査することにより,欠陥の超音波画像を作成した.受信波形に,スムージング,デ・コンボリューション,人工減衰などの処理を行い,走査法としてSAFT-UT法やALOK法を適用して,より鮮明な欠陥画像を得る方法を考案した.
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