研究概要 |
本研究では,粘塑性変形は降伏(弾性限界)応力を超過した応力の作用により生じると考える超過応力(overstress)構成式を用い,境界曲面の中を降伏曲面が移動する二曲面モデルにより硬化特性を記述する繰返し粘塑性構成式を提案した.その構成式を用いて,軟鋼板の単軸引張りにおけるリューダース帯の伝播,種々の繰返し塑性変形(速度の異なる引張り試験,定ひずみ繰返し試験,ひずみおよび応力制御ラチェット試験)における応力-ひずみ応答などのFEM数値シミュレーションを行い,軟鋼板を用いた実験結果と比較検討を行った.得られた主な結果は以下のとおりである. (1)軟鋼板の単軸引張りにおけるリューダース帯の伝播挙動について ●可動転位密度の急激な増殖と転位速度の応力依存性を考えることにより上降伏点からの降伏降下およびその後の降伏段を表現できた.また,降伏段のひずみ速度依存性もよく表現できた. ●実験では,リューダース帯が試験片の片側のみから伝播するものや,片側からリューダース帯が発生し,その伝播途中でもう一端からも発生伝播するケースが観察された.これについては,試験片の形状誤差や,試験片を治具に取り付ける時の誤差により,応力集中の仕方が異なったためであると考えられる. ●解析では,上降伏点からの急激な降伏降下を考慮することにより,塑性ひずみの局所化による不均一変形(リューダース帯の伝播)をよく表現できた.また,塑性変形が発生する弱要素の与え方(不整の程度)の違いにより上記の現象をうまく表現することができた. (2)繰返し塑性変形挙動について ●非硬化領域を考慮することで実験結果が示すような繰返し硬化のひずみ幅依存性を表現することができた. ●応力制御ラチェットの解析結果は,実験結果が示すラチェットひずみの進行におよぼす応力速度の影響,ひずみ進行の停止(シェイクダウン)などの挙動をよく表現できた.とりわけ応力-ひずみヒステリシスがほぼ閉じるような移動硬化則を用いることでより精度の高い解析が可能になった.
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