研究概要 |
本研究ではレーザを用いた光学的な方法により,金属材料の疲労損傷を非接触で評価し,余寿命を推定する方法を開発するための基礎的な研究を行った。主な研究項目は以下のとおりである。 (1)鋼材試験片に一定応力振幅の繰返し荷重を加え,疲労過程中の材料表面のあらさ変化を観測した。表面状態の変化を表わす特性パラメータとして、算術平均あらさRa、そしてあらさ曲線の周波数分布の特性を表わすパラメータS_f、さらにあらさ曲線を図形として見たときの複雑さを表わすパラメータであるフラクタル次元kを考えた。これらのパラメータと応力繰返し数との関係を調べたところ、データのばらつきがかなり見られたが、応力繰返し数の増加につれてこれらのパラメータの値は増加することがわかった。これらの結果から疲労損傷と表面状態との対応関係が有ることが確認できた。 (2)疲労過程中の試験片表面にHe-Neレーザを照射し,反射光の干渉により生じるスペックルパターンの解析を行った。スペックルパターンの特徴を表わすパラメータB_sを用いて、疲労損傷との関係を調べた。このパラメータと上記の表面特性のパラメータとの間に相関性があることがわかった。特に周波数特性を表わすパラメータS_fとの相関が高く、スペックルパターンが表面の3次元的な周波数特性と関係していることがわかった.また、B_sと応力繰返し数との関係については、表面特性との関係に比べて非常にばらつきが少なく、応力繰返し数に対して一意的な関係が有ることがわかった。したがって、疲労損傷を評価するためのパラメータとしてB_sが適していることが明らかになった。 (3)油圧サーボ式の疲労試験機に鋼材試験片を装着し,試験機を作動させたままレーザスペックルを「その場」観測するための光学系を構築した。 (4)各種の応力振幅の下で応力繰返し数とスペックルパターンとの関係を調べた。応力振幅と疲労寿命との関係を調べ,さらにこれとスペックルパターンの変化の割合との関係を調べた。同一材料についてこれらの各種の関係を求め,データベースとしてコンピュータに蓄積する。これらのデータに基づいてスペックルパターンの変化を観測することにより疲労寿命を推定するための一つの方法を考案した。寿命評価を行った結果、ある程度の精度で推定が可能であることがわかった。
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