研究概要 |
複雑な最適化問題を解くための一つの方法としてシミュレーテッドアニーリング(SA)とよばれる確率的手法が有効であり,現実の問題解決に利用されはじめている.しかし,この方法は膨大な繰り返し計算を基礎としており,計算負荷が高く,並列処理により計算時間を短縮することは急務である.そこで,種々の複雑な最適化問題に有用なSA手法の並列化を対象とし,高い並列性を持ち,従来のSAが苦手とする問題に対しても良質な最適解を高速に得ることのできる新しいアルゴリズムの提案を行い,連続および離散的変数を持つ複雑な構造システムの最適化においてその有効性を実証した.その結果,次の結論が得られた. 1.離散問題のための並列化手法である温度並列シミュレーテッドアニーリングを連続問題に適用する方法を確立した. 2.連続最適化問題に対して適応的に近傍を決定する方法を確立した.この手法は任意の受理確率を目標として設定可能であり,近傍の調節が自律的に行えるのみならず,探索性能も非常に高くなった. 3.離散的最適化問題に対して,温度スケジュールにおける重要な温度領域という概念を確立し,それを基に最高温度を自律的に決定する方法を確立した. 4.連続最適化問題における近傍の自律的調節メカニズムとして,受理確率ではなく,実際の探索性能で最適化する新たな方法を確立した.この手法は並列的に異なる近傍を持つシミュレーテッドアニーリングの並列化により可能になった. 以上の結果より,本研究は並列シミュレーテッドアニーリングに関して多くの有用な成果を出すことができた.
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