研究概要 |
本研究では,大きく分けて2つの課題について実験および解析的研究を実施した.いずれも,ガスタービン翼に使用されているコーテイング超合金の非破壊検査手法の新たな開発を目指したものである.一つは,耐食コーティングには熱応力によって多くのき裂が発生伝播するが,これらのき裂の本数と深さを,交流電位差の周波数依存性を利用して検出しようとするものである.他の一つは,コーティングと超合金との間の剥離現象を上記手法を用いて検出しようとするものである. 多数き裂の本数と深さの同時決定については,き裂の本数とき裂深さが交流電位差に及ぼす影響は異なっており,これらを利用すれば,多数き裂の本数と深さを同時決定することが出来ることが明らかになった.具体的には,種々のき裂本数や深さを有する試験片に対して,交流電位差の周波数依存性をデータベースとして蓄積しておき,未知の検査対象から得られた交流電位差の周波数依存性を比較・照合することにより,き裂の本数と深さとを決定できることが明らかとなった. 内部欠陥の深さと大きさの検出については,内部欠陥の大きさは交流電位差法から得られる最大電位として検出することが出来ることが判明した.また,欠陥深さは交流で電位差の周波数依存性として検出できることが判明した.これらのことから,交流電位差法での最大電位および電位の周波数依存性の両者から,内部欠陥の大きさと深さを決定できることが明らかとなった. 上記2点の研究課題についての,調和動電磁場の有限要素法解析も実施した.有限要素法解析から得られた交流電位差は,絶対値では実験結果とはやや差があったが,欠陥から充分離れた点での電位差比で無次元化した電位差比では,解析結果は実験結果と良好な一致を示した.
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