研究概要 |
本研究では,メカニカルアロイング(MA)法によりCuなどの第三元素あるいはBなどの微量元素を添加したTiNi系機能粉末の材料設計・作製を行い,これらの粉末を用いて作製した合金の形状記憶特性,回復応力・回復ひずみなどの熱・力学特性,繰返し特性などについて形状記憶特性試験機を改良して系統的に調査・検討し,形状記憶素子への適用について明らかにすることを目的とした. 1.12年度は,ボールミーリングによるTi-Ni-Cu系混合粉末を利用して放電焼結法により焼結体を作製し,その機械的性質および形状記憶特性について調べた.その結果,Ti-Ni-Cu溶体化処理体では,20at%Cuの試料において引張強さ500MPa程度,伸び7%と溶解材に近い特性が得られた.また,等温引張試験では超弾性に近い変形挙動を示すとともに,回復応力試験では変形抵抗が非常に低く,実用回復応力250MPa以上の優れた特性を得た. 2.13年度は,MAによる合金粉末の作製を目的として,粉末とボールの重量比,MA時間および回転数と粉末の組織変化,潤滑剤とコンタミネーションおよび回収率の関係などについて系統的に調査した.その結果,Ti-Ni合金では潤滑剤無添加で,回転数200mm, MA時間18ksで引張強さ800MPaの優れた引張特性を有する合金を作製でき,素粉末混合より格段に優れた特性が得られることがわかった. 3.14年度は,Ti-Ni合金にCuおよびBを添加してMAを行い,形状記憶特性の更なる改善を試みた.その結果Cuを添加することにより相対密度100%に近い高密度の合金が得られるとともに,変態温度幅が10K以下の応答性のよい合金を作製できることがわかったが,Bについては大きな特性の改善は見られなかった. 以上のように,MA合金粉末により形状記憶特性の改善ができ,形状記憶素子への適用の可能性を確認できた.
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