研究概要 |
光学ガラスの延性モード研削加工を達成するための手段として,メタルボンドダイヤモンドホイールの切れ刃先端をホイール作業面に揃えるトランケーション法に注目している.トランケーションの効果として,極微粒あるいは高い集中度の研削ホイールを使用することなく砥粒切込み深さを延性変形領域まで追い込める点,切れ刃逃げ面と工作物の接触領域に作用する静水圧が光学ガラスに発生するクラックの発展を抑えるという点が期待される.本研究では,光学ガラスの延性モード研削に具備すべきトランケーションの最適条件を獲得することを目的として,次の課題を遂行した. 1.研削機構の理論解析に使用すべきダイヤモンド砥粒切れ刃のモデル化と切れ刃形状の特性化を行った.その結果,切れ刃形状を三角錐でモデル化できること,切れ刃すくい角の平均値は面切れ刃,稜切れ刃とも70度であることがわかった. 2.切れ刃形状を予め測定した単結晶ダイヤモンド砥粒で光学ガラス(硼珪酸ガラス)の単粒研削実験を行い,延性モード加工から脆性モード加工に移行する臨界切込み量(dc値)を測定した.その結果,dc値は負のすくい角の増加に伴って減少し,すくい角70度付近のdc値は100nmであることがわかった.また,上向き研削よりも下向き研削のほうが20nmほど小さくなることがわかった. 3.切れ刃トランケーションの前処理として,メタルボンドダイヤモンドホイールのツルーイング(成形)とドレッシング(砥粒突出し)を行なう接触放電法を開発した.すなわち,円弧電極の包絡線でホイール断面プロフィルを直線に創成する手法を開発し,ホイール幅10mmに対して0.5μmの直線性を得ることができた. 4.モンテカルロ法による研削シミュレーションを開発し,最大砥粒切込み深さgを臨界切込み量dc以下にするために設定すべきホイール仕様,研削条件とトランケーション量の関係を明らかにした. 現在,各種仕様のメタルボンドホイールに対してトランケーション実験を行い,トランケーション量の定量的評価と研削抵抗に及ぼす影響を検討中である.
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