研究概要 |
外周刃ブレードによるスライシング加工では,加工中に生じるブレードのたわみが切断精度に多大な影響を与える.そうしたブレードのたわみは,ブレードの偏摩耗,刃先の切れ味のアンバランスなど,様々な要因によってもたらさる.切断にあたってそれらの要因を完全に排除することは現在の技術では困難である.そこで本研究では,ブレードガイドを用いてブレードのたわみをアクティブ制御する方法について検討した.ブレードガイドは,外周刃ブレードによるセルフカットで製作した.はじめの実験では,固定したブレードガイドが切断精度に与える影響を調べた.厚さ0.1mmのオールブレードタイプの電鋳ダイヤモンドブレードにセラミックス製のブレードガイドを装着し,厚さ2mmのアルチックを切断した結果,ブレードガイドを用いることでブレードのたわみが抑制され,切断軌道の偏位が低減することがわかった.その効果は,ブレード側面とガイド面間に生じたくさび状隙間に研削液が流入し,そこに生じた動圧によって得られると考えた. 次に,上記実験をモデル化し,理論解析によってブレードガイドが切断精度に与える影響を調べ,ブレードガイドを用いない場合に比べ,ブレードガイドを用いた場合は切断軌道の偏位が2/3程度に抑えられることを示した. さらに,ブレードのたわみを渦電流式変位センサでモニターし,たわみ量に基づいてブレードガイドの位置を積層型圧電素子で変化させるシステムを試作し,その制御方法について検討した.ブレードガイドの位置Z_Gと研削点でのブレードのたわみZ_Wと渦電流式変位センサからの出力Z_Sの間には一義的関係があることが実験から明らかになり,Z_GとZ_WとZ_Sの間にF(Z_G, Z_S, Z_W)=0なる関係があるとき,F(Z_G, Z_S, 0)=0が満足されるようにZ_Gを変化させれば切断軌道の偏位を抑制できることがわかった.
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