研究概要 |
超硬合金を大気中で加熱していくと,その主成分である炭化タングステンWCは約620℃でタングステンWと炭素Cに分解することを見いだした.一般に,放電加工は溶融除去を主体とする加工法である.もしも,炭化タングステンの分解にもとづいて超硬合金を放電加工することができるならば,約620℃という低い温度で加工することが可能である.本研究は,超硬合金の高能率放電加工の確立をめざして実験を行い,以下に示す結論を得た. (1)超硬合金の分解過程の解明 炭化タングステンは酸素の存在する環境下ではじめてタングステンと炭素に分解する.加工液に脱イオン水を用いた場合,溶存酸素に加えて,水の電気分解による酸素の供給が考えられる.そこで,脱イオン水中で超硬合金を放電加工した結果, (1)X線回折を通して,加工屑から単体のタングステンWが検出されたこと. (2)WCを構成する炭素Cは,分解した後CO_2として排出されたこと. 以上の理由により,脱イオン水中で超硬合金を放電加工すると,主成分である炭化タングステンWCは分解・酸化反応を起こすことがわかった. (2)溶存酸素量による加工速度の変化 一般に,水中に溶存できる最大酸素量は20mg/lである.ここでは酸素バブリングの手法を用いて,溶存酸素が過飽和に存在する脱イオン水を生成し,加工実験を行った.その結果,高溶存酸素脱イオン水を用いた場合,低溶存酸素濃度脱イオン水の場合と比較して,加工速度は約30%も増加することがわかった.
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