研究概要 |
本研究では,従来切削油を大量に必要としていた高速旋削やフライス加工をセミドライ化して,環境に優しいグリーン加工へと転換を図るための技術開発の一環として,複合ミスト加工法の開発を行った.この複合ミスト加工法とは,切削点の潤滑を確保するための潤滑剤として極めて少量の植物性油剤をミスト状にして加工点に供給し,さらに切削点の温度を下げるためにミスト状の水を切削油剤と同軸で噴射するもので,油ミストが水ミストに覆われていることから周囲への油の飛散が抑制出来る上,油と水の供給量を制御することによって被削材料の種類や加工形態,加工速度などの諸条件に合わせた最適な潤滑と冷却を行うことが出来る.平成12年度は難削材料であるSUS304ステンレス鋼のフライス加工に本方法を適用し,油供給を10〜60ml/h,水供給を100-300ml/h,エア流量を150-450Nm3/hとして完全ドライ切削と比較した結果,同じ加工条件で被削材温度が50℃低下,工具のフランク摩耗は半分に抑制,仕上げ面粗さが十点平均粗さで5倍以上向上するなどの顕著な効果があることがわかった.平成13年度は,ミスト供給によるフライス加工の潤滑性の向上のため,工具とノズルおよび,被削材の位置関係によらず常に安定した状態でミストを供給するような,環状ミストノズルの開発を行った.これは,フライス盤の工具基部からエンドミル先端に向かってちょうど工具を包み込むようにミストを供給する装置で,環状のチャンバーとリング状のミスト供給スリットを持つ.本装置を使用した場合と,通常のミストノズルを利用した場合とで,同条件の加工を行った場合の工具摩耗や仕上げ面粗さを比較した結果,チッピングの防止や仕上げ面あらさのばらつきの抑制などの顕著な効果が認められた.
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