研究概要 |
作業環境および地球環境の改善,さらに切削油関連費用低減の観点から注目を集めている切削油を使用しないドライホブ切りにおいて,高速度鋼ホブの材質およびコーティング材質の種類を変え,特に問題となるクレータ摩耗の発生機構を重点的に調べた. 実験は,ホブ切りをフライス盤での舞いツール切削にシミュレートして行った.まず,ホブ切りと舞いツール切削の対応性を調べ,次にドライ切削と湿式切削の比較,切削速度の影響,ホブ条数とホブ送りの影響,被削材種と硬さの影響および全面コーティング被膜の影響について検討を行った. その結果を要約すると,次のとおりである. 1.ホブ切りよりも舞いツール切削のほうがクレータ摩耗は大きく現れる傾向にあるが,舞いツール切削での実験結果は,実機でのホブ切りにも十分適応できる. 2.ドライ切削よりも切削油(添加剤として硫化脂肪油を含む)を用いたほうが、クレータ摩耗は大きく現れる. 3.切削速度47m/minから86m/minまでは,溶解材SKH55相当の工具とM34の工具の場合,切削速度が増すにつれてクレータ摩耗は増加し,117m/minで激減する.粉末材SKH10の工具の場合,速度依存性はあまりない. 4.クレータ摩耗は,ホブ条数およびホブ送りが大きくなるにつれて減少し,多条高送りの3条ホブ,送り3.0mm/revが有利である. 5.被削材SCM415を切削した場合,クレータ摩耗は小さく,次にSCr420,sCM435の順に大きくなる.SCM415材の硬さを変えた実験では,比較的硬いHB157の材料を切削した場合に,クレータ摩耗は小さい. 6.すくい面にコーティング膜がある場合のクレータ摩耗の発生機構は,まずコーティング膜の塑性変形が起こり,続いてコーティング膜のはく離によって母材が現れ,その母材を切りくずが擦るため,クレータ摩耗は深くなることが示唆された. 7.クレータ摩耗,逃げ面摩耗など総合的に見た場合,SKH55相当の母材に(Al, Ti)Nコーティングを施した工具が,ドライホブ切りに適している.
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