研究概要 |
半導体産業の基幹材料であるシリコンウエハの研磨には,KOH水溶液とシリカパウダーを混合した大量の化学スラリーが使用されているが,作業者の安全確保や地球環境の保護の観点から今後はこれらの化学スラリーの使用量削減さらには廃棄が望ましい.代替技術として申請者らが開発した軟質砥粒によるメカノケミカルポリシング法が注目されいている.これは化学液を用いずに超平滑・無ひずみの高精度研磨を可能にする次世代型加工法であり,湿式加工よりもドライ加工に適する。さらにこの軟質砥粒を素材とするメカノケミカル砥石を用いれば,研磨砥粒の消費量自体を極く僅かに抑えることが可能となり,環境にやさしいクリーン研磨技術として極めて有望と考えられる。本研究の成果の概要は下記の通りである。 (1)変雰囲気中でのドライポリシングが可能な加工機構・定圧研磨装置を試作した。Arガス、酸素ガス、窒素ガス、大気中などの各種ドライ雰囲気中でBaCO3、CaCO3、ZnO砥粒による乾式メカノケミカルポリシングを行い、(1)いずれの砥粒を用いても不活性ガス中でも加工が可能であり、シリコン表面の酸化はメカノケミカル反応に不要であること、(2)砥粒により雰囲気効果が異なり、反応プロセスも砥粒ごとに異なることが推定されること、など加工メカニズムの解明に極めて有用なデータを得た。 (2)シリコンウエハのドライポリシングに適したメカノケミカル砥石の開発を試みた。結合剤レスのBaCO3砥石とZnO砥石を試作してシリコンウエハの定圧研磨を行い、両者とも砥石の表面形状を調整することにより効率的な研磨が可能であること、エッジダレの少ない高精度加工が可能であることなどを見出し、遊離砥粒方式に対して優位性を有することを明らかにした. (3)本研究からメカノケミカルポリシングによる環境にやさしいポリシング法の実用化の方向性が明らかにされた。
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