研究概要 |
今回の期間では,主にイオンビーム加工についての加工損傷について調べたので報告する. ダイヤモンドのイオンビーム加工は従来イオン種として不活性種を用いたイオンビーム加工(Ion-Beam Etching : IBE)や,活性種を用いたリアクティブイオンビーム加工(Reactive Ion Beam Etching : RIBE)等が用いられてきた。しかしこれらのイオンビーム加工は,プラズマ雰囲気内で加工が行われるリアクティブイオン加工(Reactive Ion Etching, RIE)と比べ異方性が得られる点では優れているが,加工促進に大いに関係があると思われるラジカル種を任意で除外しているため,加工速度の面では劣っていた。そこで異方性を保ちつつ加工速度を上げるために考えられたのが,本実験の主旨であるイオンビーム化学援用加工である。 本研究では,ECR型イオン源を備えたイオシビームシャワー加工装置を用いて,人工合成単結晶ダイヤモンドの各種イオンビーム加工(IBE, RIBE, Ion-Beam Assisted Etching : IBEAE, Reactive Ion Beam Assisted Etching : RIBAE)を行い,比加工速度のイオンエネルギー依存性について比較検討した。また,加工方法の違いによる損傷をXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)により解析した。 結果、加工速度のイオンエネルギー依存性は非線形的であり、エネルギー増加と伴に加工速度が単純増加しないことが分かった。殊更,援用加工は援角効果が最大となる極大値が存在し,RIBAE加工の500eV, IBAE加工では1000eV前後で加工速度が最大となった。また4種類の加工法の中では,RIBAE加工の500eVで最大加工速度が得られた。また,XPSの結果より,何れの加工法でも試料表面の結晶構造がダイヤモンド構造から崩れ,グラファイト構造やアモルファス構造に転じることが分かった。最もグラファイト化傾向が少ない加工方法はRIBAE加工であり,続いてRIBE加工,IBAE加工となる。対して,グラファイト化が顕著に表れたのがIBE加工である。
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