研究概要 |
本研究では,電子素子材料の精密切断に多用されている加工技術の1つである内周刃切断方式の高性能化を目指している.そこで,加工中の工作物に楕円振動を付加させる切断方式を考案し,その装置にSiC砥粒を混合させた加工液を用いて切断実験を行った際の加工特性並びに加工メカニズムを検討した結果を明らかにした.そして,得られた研究成果を通じて実用化への可能性を検討した.本研究の成果はそれぞれ以下の通りである. 1.本加エ方式を環境に配慮した方式にするために,水系加工液(水並びに水溶性切削液)に砥粒を混合させ,実験を行った.その結果,加工液の蒸発性の問題から水或いは通常の水溶性切削油より,半導体加工で主流となりつつあるマルチワイヤソー等で用いられている蒸発防止剤や砥粒の沈降防止剤を添加レた加工液の方が優れた加工特性を示すことが明らかになった. 2.加工液中に混合させる砥粒は工具表面のダイヤモンド砥粒の突き出し量と同じ直径で破砕性に優れるSiC砥粒がチッピングの低減効果が大きいことを明らかにした. 3.工作物エッジ部に生じるチッピング(欠け,割れ)の大きさは,内周刃ブレードの工作物への進入角と離脱角に依存して変化し,チッピングの絶対値はブレード進入側の方が小さく,工具である内周刃ブレードの工作物進入角並びに離脱角が浅いほどチッピングを減少させることも明らかになった.また,振動加工はチッピングを増大させることが明らかとなった. 4.チッピングを減少させ得る粒径のSic砥粒を混合させた場合,ウエハうねりやBOWは向上するが、加工面の粗さは低下する傾向を示すことが明らかとなった.しかしながら,半導体シリコンを切断した際に問題となる加工クラック層は30μm弱で有り,十分実用可能であることが明らかとなった. 5.砥粒を加工液中に混合させた場合に,工具の砥粒層摩耗は大きくなることが明らかとなった.
|