研究概要 |
本研究では,TiとVの比の異なる(Ti, V)N膜コーテッド超硬合金が使用された.(Ti, V)N膜形成条件は,アーク電流100A,バイアス電圧-100V,母材の温度673K,窒素ガス圧2.7Paである.使用した母材は超硬合金K10種である.使用したターゲット(陰極電極)は,Ti75V25,Ti50V50,Ti25V75である.種々の被削材切削時について有効な工具材を明らかにするために,(Ti, V)N膜コーテッド超硬合金工具の工具摩耗が実験的に調べられる.得られた主な結果は次の通りである.(1)TiN膜の硬さはHV_<0.25N>1940で,スクラッチ強度は64Nである.Ti75V25N膜の硬さはHV_<0.25N>2970で,スクラッチ強度は90Nである.Ti50V50N膜の硬さはHV_<0.25N>2820で,スクラッチ強度は80Nである.Ti25V75N膜の硬さはHV_<0.25N>2510で,スクラッチ強度は91Nである.それゆえ,Ti75V25N膜コーテッド超硬合金は,高硬度で高密着強度である.(2)Ti75V25N膜コーテッド超硬合金工具がSUS310S切削時に最も有効な工具材である.(3)焼結鉄材の切削においては,Ti75V25N膜コーテッド工具の摩耗進行が最も遅い.(4)Ti75V25N膜コーテッド超硬合金工具が焼結ステンレス鋼の切削に最も適している.(5)焼結鍛造材の切削においては,Ti75V25N膜コーテッド工具の摩耗進行が最も遅い.
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