研究概要 |
すべり送りねじはボールねじや静圧ねじと比べて,摩擦損失が大きいという欠点を持つが,剛性や振動減衰性の面では格段に優れている.そこですべり送りねじの高剛性・低振動性を生かしながら摩擦損失を低減する方法として,すべり面に接触面が分離しない程度の空気圧を供給し,振動減衰に有利な固体接触を保ちつつ,接触面間の負荷の一部を空気圧により支持する方法を提案する.本研究では,このような半浮上すべり送りねじを開発し,その有効性と問題点を明らかにすることを目的とする. まず,半浮上すべり送りねじの設計データを得るために,ねじの接触を単純な円筒端面の接触にモデル化し,その摩擦特性と空気圧による摩擦低減効果の概略を把握した.円筒モデル接触部形状は,外形32mm内径18mmの円環状とし,荷重と空気圧および回転速度を種々に変えて摩擦トルクを測定した.実験の結果,F=147Nの時には空気圧を0.1MPa増加させるごとに摩擦力が38%ずつ低下し,空気圧による摩擦低減効果を確認することができた. 次に,すべりねじに比較的単純な空気路を付与した半浮上すべり送りねじを試作した.基本ねじ山形は,ねじ軸外径30mm,リード8mmの30度台形ねじとし,めねじフランクに幅2.4mm,深さ0.6mmのリセスを形成した.ナット材質は青銅(BC6),ねじ軸材質はSCM415Hとした.試作した半浮上すべり送りねじについて,荷重と空気圧および回転速度を種々に変えて摩擦トルクを測定して見かけの摩擦係数を求めた.その結果,F=600N, P=0.3MPaの場合には,摩擦損失が空気圧0の場合に対して約40%低減することを確認し,本研究で提案する半浮上すべり送りねじの有効性を実証することができた.さらに,試作した半浮上すべり送りねじを組み込む位置決め実験装置を製作し,実機への応用を展開するための基本モデルを構成した.
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